極上の他人
どうもおかしい。
史郁と触れ合う時間が極端に減って、俺の精神状態は、おかしい。
やたらとあいつが恋しくて落ち着かない。
最後に史郁を抱いて一週間。
付き合い出してから、これほど長い間抱かずにいることなんてなかったな。
俺がいなければ寂しいからと、どんなに仕事が忙しくても俺の家に来ては鬱陶しいほど抱きついて離れなかったのに。
「まったく、仕事が恋人かよ」
いらいらとした気持ちを隠すことなく呟く俺の声に、少し離れた場所にいる千早が苦笑している。
既に大学院の過程を終え、一般企業に就職した千早は今年結婚した。
結婚式で紹介された、長く付き合ってきたという奥さんを見る千早の表情は柔らかく、幸せそうだった。
時々店に飲みに来るが、今日はラストまで飲んだあと「気分転換に」と言って閉店後の片づけを手伝ってくれている。