極上の他人
意外に簡単に離れたその体に寂しさを覚えつつも、自分の気持ちを落ち着けようと、再びお水を飲んで、深呼吸した。
「体調が悪くないならいいけど、どうして帰ろうとしたんだ?せっかく来たんだから夕食を食べればいいだろ?」
あ、やっぱりそこに戻るんだ。
私がどうして帰ろうとしたかなんて、正直に言ったら困るのは輝さんなのに、言えるわけがない。
それに、輝さんを好きだと自覚したばかりで、自分の感情に折り合いをつけるだけで精いっぱいだ。
「急いでるのか?」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど」
「じゃ、どうして?」
「それは……」
輝さんは尚も鋭い視線で私を見つめ、答えを待っている。
形のいい顎だな、顔のパーツもバランスよくおさまっているし。
気持ちをそらすように輝さんの顔を見ながらどうしようどうしようと唇をかみしめていると、千早くんの声が響いた。