極上の他人
「史郁、コーヒー淹れたからおいで。お客様にいただいたシュークリームもあるぞ」
「……今はいい。欲しくない」
涙を見せたくなくて、目の上に腕を乗せてそう呟いた。
だけど、私のくぐもった声を聞いて、輝さんが私の状態に気づかないわけがない。
私の全てに人一倍敏感な人だから、隠しとおせることなんてないのだ。
「仕事で何かあったのか?」
やっぱり。
仕事部屋の真ん中で寝転んでいる私の側に、暖かい気配を感じた。
しゃがみこんだ輝さんの声が耳元に聞こえ、暖かい指先が私の頬をくすぐる。
目元に置いていた腕を、そっと外され、くすりと笑われた。