極上の他人
「今回はどんな家の希望を受けたんだ?」
「……言えない」
「ん?」
「……言えないの」
「ああ、守秘義務ってやつか?」
「ん。ごめん」
「それは構わないけど。……俺がこの部屋に様子を見に来るってわかっていたんだろ?机に図面の一つも置いていないしパソコンの画面も落ちているし」
「だって、見られたらまずいんだもん」
「だよな。偉い偉い。でも、仕事に煮詰まってラグの上に寝転ぶほどなのに、その前にちゃんと画面から資料を消しておくなんて、笑える」
輝さんは、よしよし、とでもいうように私の頭を撫でてくれた。