極上の他人


すると、突然甲高い声が聞こえた。

『人の電話を勝手に使うんじゃないっ……あ、ふみちゃん?ごめんね、千早くんって、見た目と違ってかなり強引みたいで。スマホは無事に取り戻したから、安心して』

「亜実さん?」

『本当、勝手にふみちゃんと話すなんて、よっぽどふみちゃんを気に入ったのかしらね。だったらこないだのお見合い、ふみちゃんと千早くんでセッティングすればよかったわね。
あ、今からでも遅くないから、二人でどう?お見合い』

「え?」

亜実さんの言葉に、思わず大きな声をあげてしまった。

『だって、年だって近いし仲もよさそうだし、そっかあ。輝くんじゃなくて最初から千早くんとお見合いしてもらえば良かったな』

私と千早くんがお見合い。

確かに年も近いし話も合うけれど、だからといってうまくいくとは思えない。

一緒にいれば楽しいし安心感があるけれど、それはお見合いの延長線上にある結婚を受け入れる為の要素としてはかなり弱い。

それどころか、お互いに恋愛感情を持てない二人がお見合いをしても、きっと『このお話はご縁がなかったということで』と頭を下げるに違いない。

『つきあってみなきゃわかんないことも多いんだから、いいじゃない、千早くんなら将来もお堅い仕事に就いて稼いでくれそうだし。えっと、遺伝子?そんな研究が儲かるかどうかよく知らないけど』

尚も話をすすめようとする亜実さんは、本気でそう言っているようで、笑ってしまう。

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