極上の他人
『ふみちゃんが、店に来るたび輝さんを好きになっていくのって、わかりやすくてかわいすぎ』
「かわいくなんかないけど」
『輝さんも、きっとふみちゃんを可愛いって思ってるよ、そうじゃなきゃ、昨日あんなに』
「あんなに……?」
輝さんの名前を連呼されて、その度にどきどきと脈が高まる。
体が熱いのはきっと、微熱のせいだけではないはずだ。
輝さんの顔を思い浮かべるだけで眩暈すら感じるし、鼓動だって激しい。
昨日輝さんへの想いは恋心だと認めて、そしてその想いが報われることはないと実感したばかりで、冷静ではいられないのに。
『輝さん、昨日あれから……』
相変わらず不機嫌な千早くんの声に耳を傾けるけれど、それ以上何も聞こえてこない。
あれ、どうしたんだろう?
「千早くん?どうかした?」
小さな声で呟いても、千早くんからの答えはなかった。
輝さん、あれから、どうしたんだろう。
言いづらくて悩んでるのかな……。
私には無理だと諦めた人だし、お店にも行かないって決めたばかりなのに、そんなこと忘れるくらい気になった。