極上の他人


「あ、ありがとうございます。すみません」

手にした袋は意外に重くて、思わず輝さんの顔を見ると、どこか不安げな表情。

首を傾げる私に小さく笑った輝さんは、他にも色々詰めてあるから、と視線を紙袋に向けた。

その言葉に、紙袋を開けて中を見てみると、幾つかのタッパーに分けられて入っているお惣菜らしきもの。

かなりの量が入っていて、ハンバーグだけではないと、すぐにわかる。

一番上に乗せられているタッパーをちらりと見ると、半透明の蓋越しに見えるそれは一面黄色で、私が好きなだし巻卵のようだ。

「だし巻は冷めてもおいしいから、ちゃんと食べて体調戻せよ」

「はい。あ、ありがとうございます……」

私を気遣うような優しい声を聞かされて、急に心がそわそわする。

いつもお店で会うだけで、こうしてお店の外で会うなんて初めてだ。

それも私の部屋の前。

予想外過ぎて、どんな顔を見せてどんな言葉を返せばいいのか、全くわからない。

私の体調を気にかけてわざわざ訪ねてきてくれたんだから、ちゃんとお礼を言いたいと思えば思うほど、言葉が出てこない。

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