極上の他人


「あの……」

緊張を隠せないまま玄関のドアを開けると、感情が読み取れない表情で立っている輝さんがいた。

「体調崩したって聞いたけど、大丈夫か?」

「あ、大丈夫です。えっと、その、わざわざすみません」

小さく頭を下げながらも、恥ずかしくて目を合わせることができない。

部屋着だと一目でわかるパステルピンクのジャージを隠すように、ドアをほんの少しだけ開けて顔を出した。

目の前に輝さんがいることが信じられないし、化粧もしていない自分を見られたくない。

シャワーを浴びて、髪を洗っていたことだけが救いだ、と目の前にある輝さんの足元を見ながら思っていると。

「これ、ふみちゃんが好きなハンバーグ。食べられるか?病み上がりで食欲がないなら冷凍しておいてもいいから」

「え?そんな、わざわざすみません……でも、大丈夫です、色々と買ってるし……」

「色々っていっても、おにぎりとかパンとか、調理しなくていいものばかりだろ?栄養が偏って体調戻らないぞ。遠慮しなくていいから」

おにぎりやらパン。

確かに私が昨日買い込んだものはそんな簡単に食べられるものばかりだった。

それを見抜かれていたことが恥ずかしくてかっと熱くなった。

そして慌てて輝さんから差し出された紙袋を受け取った。

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