極上の他人
「あの、のどが渇いたんです……けど」
輝さんに心配されているとわかって、調子に乗った私は、そんなわがままを、呟いた。
輝さんに少しでも長く私の側にいて欲しくて、一人になるのが嫌で。
甘えているような小さな呟きを聞いた輝さんは、私の頬を優しく撫でて、嬉しそうにほほ笑んだ。
「……冷蔵庫から、水を持ってくるから待ってろ。なんなら、口移しで飲ませてやろうか?」
「えっ……。く、口移しって、それは、い、いいです」
「そうか?残念」
くくっとのどの奥を震わせた輝さんは、近くにあったクッションを幾つか手に取ると、私の体を起こして背中に当ててくれた。
私の体を気遣いながらゆっくりと、まるで恋人に触れるような愛しげな指の動きを背中に感じて、貧血が原因ではない眩暈を感じる。
この眩暈はきっと、輝さんの吐息を近くに感じて、私の心が揺れているせいだ。
クッションを整えてくれる輝さんの口元が私の首筋を刺激するように感じて、震える。
わざとなのか、そうでないのか、熱い吐息を何度も感じて、その度に心臓も跳ねる。
私はひたすら俯いて、輝さんが私から離れてくれるのを待った。
そして、私をベッドの背に並べたクッションにもたれさせた後、輝さんは私の顔を覗き込む。