秘密の言葉
様子を伺うように、水木君の顔を見ると、また寂しそうに笑ってた。
前を向いているのに、楽しそうには見えなくて。

「水木君は、好きな食べ物とかある?」

ゆっくり、ゆっくり。

「甘いものが好き。嫌いなのはピーマン」

「あはは、子供みたいね?野菜は調理しだいで美味しいんだよ?」

「ピーマン苦い…!」

拗ねた様な、幼い表情。

「甘いもの好きって言ったよね?今度ケーキ作ってあげる!」

「本当に?えへへっ…」

幸せそうに、頬を染めた表情。

「じゃあ、好きな人は?」

「…」

ザーッと、まるで言葉を隠すように、私達の会話に突風が吹いた。

「…水木君?」

「ん?何でもない」

崩れてしまいそうな、作り笑い。
私は、こんな水木君しかしらない。
もっともっと、笑って欲しい。
もっと色んな表情を、見せてほしい。20

「私ね、いるよ!…好きな人」

目を大きくして、『誰?』という眼差しを向ける水木君。

「その人はね…とっても優しい人!それで、運命の人…かもしれないし…嘘つきかも、しれない…」

過去に会ったあの子を、私は好きだ。
それは、数年経った今も、バカみたいに変わらない。
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