短編 星降る夜にまた逢いましょう
被ったし!
『あの』…

二人の声が重なった。


僕はこんばんはっていうはずなのになんで

“あの”

とか言ってんだ。

テンパりすぎだろ。

でも何で声かけてくれたんだろ。

まさか僕に興味を…?




うわ。被ったよ。
気まずいよ。
私に何か付いてるって言おうとしてくれたのかな。

とりあえず話を聞こうかな。




「ははっ」
僕は笑ってごまかした。
つられて彼女も笑ってる。
なんだかおかしいな。

「なんでした?」

僕の問いに



「いや…なんでも」

あれ?
何か付いてるっていうんじゃないの。
もう嫌。恥ずかしいし逃げたいよ。


「あの…何もないなら帰りますね。」

早く逃げたい。
その一心だった。

でも自分から声かけて、逃げたらただの当たり屋みたいだなぁ。




「待ってください!」
何引き止めてんだ。馬鹿。
「えとですね…」


何も思い付かない。

「食事でもどうですか?」

はい。ナンパだ。

自分何してんだか。


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