私はまだ、ガラスの靴を履く勇気がない。



―――……私は、嫌いだった。







こんな名前を付けた親も嫌いだったけど、その名前に全然釣りあえなかった自分も


……大嫌いだった。






『……ねぇねぇ知ってる?あの子の名前』
『あー知ってるよ。有名だもんねー』
『全然合ってないよねー』
『ほんとほんと』
『…あんな子がお姫様なんて』
『笑っちゃうよねー』
『……ブス』
 


擦れ違い。何度も呟かれる。
 

どんなに小さな声だって、私の心は確実に虫食んでいた。
 
……名前を呼ばれるのが、嫌で嫌でしょうがなかった。
 


もちろんそれは皆も同じで、私なんかを名前で呼ぶ人は居なかった。
 


…恨める人もいない。責められる人もいない。

……相談できる人もいない。


そんな私。       




 『白雪 姫』








…でも、私は生きてきた。

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