私はまだ、ガラスの靴を履く勇気がない。
「…そんなこと…言うなよ」
「…なんですか?」
「自分のこと、悪く言うな」
「…それがほんとのことでもですか」
「さぁな。でも…」
大神君の指が私の頭を触る。
温かい。大きい手だった。
私は、俯いた。
「…俺は、そんなこと思ってねぇ」
「ありがとうございます」
「……おう」
優しい声だった。
――これが、私たちの出会いだった。
この時から……
私の中で、何かが始まったのだろう。