続・危険なキス
 
「……」


車の中で、流れる沈黙。

何をどう話したらいいのか分からない。


全く関係ない世間話をするのも、なんだかしらじらしいし、
自分から美香さんのことを聞くほど、勇気なんかなかった。


バイト先から家までなんて、車で走れば15分程度。

家の前にはあっという間に着いた。



「わざわざ送ってくれて……
 ありがとうございます」


結局切り出せないまま。
先生も黙っていて、やりきれない気持ちのままドアに手をかけた。



「不安になることなんて、なんもないから」



前を見つめたまま、先生が口を開いた。

思わず、ドアから手を外し、振り返る。



「あいつは……お前が想像してる通り、俺が初めて本気で付き合った女。

 だけどもうそれは、10年前に終わってるから」



先生は振り向き、少しだけ困った表情をあたしに向けた。
 
< 45 / 344 >

この作品をシェア

pagetop