今宵、真夜中の青を注いで
まさか自分の名前を覚えていて貰えているとは思わなくて少し目を見開く。
学年一モテるような人だ、声をかける女の子は少なくないけど、全て生返事でそのまま寝てしまう。
いつも寝てるし、夜久君は仲の良い2~3人の男の子達としか言葉を交わさない。
女の子なんて眼中にないといった感じの彼がクラスメイトとは言え、まさか自分の名前を覚えていてくれるだなんて思わなかった。
「あ、えと、うん、そう。碧海雪穂、です」
だから、一瞬言葉に詰まって、変な自己紹介になってしまった。
あー、なにやってんだ、あたし。
絶対に変な奴だと思われた。
「なんでそんなきょどってんの?」
不思議そうに首をかしげつつ、夜久君は寝袋から起きて座る。
あたしは流石に苗字覚えられてるなんて思わなくて驚いたなんて言えなくて、咄嗟の苦し紛れを口にした。
「それは、えっと......そう、まさかこんな時間にクラスメイトに会えるとは思わなくて......」