金色・銀色王子さま
私が意識しすぎてるから、こんな空気が続くんだ。






「…はぁ~、寒いねやっぱり。帰ろう…ってもう家、目の前か、あははっ!
仕事もそろそろクリスマスに向けて忙しくなるなぁー…片桐もそうでしょ?バーとか忙しいもんね?
お互い、忙しくなるけど頑張ろうね!」


無表情の片桐に渇を入れる意味も込めて、強めに肩を叩いてみた。
ムッとされるか、怒られるか、そう構えてたけど何もされない。麻衣はまぁ、いいかと鞄から鍵を取り出して「じゃぁおやすみ」と言ってドアを開けようとしたときだった。

後ろから伸びてきた腕が勢いよくドアを押さえて、その音に思わず心臓がはねた。










「……気付かないフリすんなよ」



ドアを視界に、背後から低い声が耳元に触れた。
伸びた手は決してドアを開けさそうとはしてくれない。
うるさい、うるさい心臓!静かにして!
胸を抑えながら、小さく答える。


「な…なに…を…」

「………っ」




伸びた手が抑えつけたドアから、麻衣の体を抱きしめた。
強く、ぎゅっと包まれるように。
反射的に麻衣の手はドアノブから放れて、ガチャ…と小さく音を立ててしっかり締まってしまった。
鼻を掠める、自分とは違う匂いと体温が包んでいく。








「分かってんでしょ?……俺があんたに惚れてること」



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