金色・銀色王子さま



「…………っ」

嘘だって、冗談だって、そう思ってたのに核心を突いたその言葉は、その腕とともに逃げられなくさせる。
外の空気に当たって、さっきまで顔が冷たかったのに熱くなってくる。






「分かんないよ…片桐のこと、分かんない」


「…………」



「私のことバカにしたり意地悪なこと言ったり…かと思えば助けてくれたりキスしたり…ワケ分かんない…」


「…………」



「分かる訳ないじゃん…これ以上混乱させないで!」




一瞬、抱きしめる腕に力が入ったように感じた。
だけどその力は程なくして、ゆっくりと鎖がほどけるみたいにするりと体から離れていった。







「ガキじゃあるまいし…好きでもないヤツにキスなんかするかよ。抱き締めたりするかよ」


「……っ」


「だけど…あんたが本気で迷惑してたんだったら悪かった。ごめん」




振り向かなくても分かった。
片桐は私から少し距離を取ってから、少しだけ目線を逸らして俯いてるんだろう。



「あの、」



そっと顔を横に向けたら片桐の淡い匂いを残して、ただドアが閉まる音だけが耳に残った。



これでいいんだ。
片桐はもう、私をからかったりしない…。
なのに、この不安はなんでだろう。
抱きしめられた体に残る、彼の跡がこんなに痛いなんて…どうかしてる。


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