金色・銀色王子さま


「…え?」

振り返るとカイトの真剣な眼差しが自分に向けられていた。
邪魔になったのか濡れて視界に入ってきた前髪を掻きあげて、カイトの表情がはっきり分かった。

無言で、ごくりと静かに息をのむ。
雨はさらに強さを増してるのに、耳には何の音も入ってこない。
ただ、逃げさせてはくれないカイトの瞳が思考回路をマヒさせる。


「な、なんで…」

「…………」

「なんで…そう思うの?」


麻衣がそう言うと、カイトはフッと口角を上げた。
そしてメガネをそっと受け取りながら苦笑して言う。



「ごめん。変な事言った俺。麻衣ちゃんは、お隣さんだもんね」







お隣さん・・・・




「カイトは…私にとって、ただのお隣さんじゃないよ。カイトは私のっ…」


「…………」



カイトの視線が麻衣ではなく、その後ろに向けられていた。
明らかに分かる、グレーの瞳がゆらゆらと動揺を隠せないでいる。
麻衣はゆっくり、背後へと振り向くと、赤色の傘を手に持った女の人がこちらを向いて立っていた。






「……莉奈」



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