曇り空
「……」
「どうした、早く来い」
あっけにとられている内に、デュセルはさっさと歩き始めてしまう。
「い、行こう」
何が起きたのか分からないといった様子のスノウの手を取り、デュセルの後を追った。
------無言のまま数分灰色の入り組んだ町の中を歩き、少し開けた通りに出る。すると、中型の運搬トラックの荷台部分が突っ込んだ、地下あわせて三階建てのゲームセンターがすぐに目に入った。
トラックの運転席はゲームセンターの入口から突き出ており、立体感を醸し出すはずだった外の階段は崩れ、更に周囲の崩れかけたマンション等と並んでいるので、より廃れた雰囲気が出ている。
「ついたぞ、これが俺"たち"の"研究室"だ」
デュセルはそう二つの気になることを言うと、トラックの隅からゲームセンターの中に入っていく。といっても、こちらは足のもたつくスノウと手をつないだままだったので、結構離れていたのだが。
「あんなやつが他にもいるのか? それに研究室って……」
どう見ても、崩れかけたゲームセンターである。それに、微かではあるが血を引きずったような跡が地面に見られる。
「いこ」
そう、入るのに躊躇していた時、スノウが手を引っ張って歩き出した。
「いや待てって、なんか危なげだし、いったん様子を見てからの方が……」
恥ずかしながら、先日の化け物との戦闘から少し慎重になっている。だが、スノウは確信に満ちた青い瞳を返してきた。
「だいじょぶ、あの人は怖くない。奥にいる大きな人も優しい人」
ほんのり笑いながらそう語るスノウから、もしかするとスノウはデュセルの事を知っているのかもしれない。もしそうなら、スノウの記憶に関することが分かるかもしれない。もしかすると、家族かもしれない可能性だってある。
「そっか……ならまぁ、行きますかね」
家族や知り合いだった場合、スノウを引き取られるかもしれないが、それはスノウのためである。
「スノウ……」
甘く切ない、可笑しな謎の感覚に苛まれながら、デュセルの後を追ったのだった。
------「いや、知らん。お前は?」
「知るわけねぇよ、俺は年下の女は専門外だし」
不気味で薄暗い室内に入って早々に、謎の感覚は消えはて、すっ転びそうになる。
「まぁいいぜ、俺は誰とでもすぐ仲良くなれるからな!」
デュセルの奥に座っていた大柄な熊の様な大男が、むくっと立ち上がり、すっきりした笑顔で近付いてくる。
「俺はピエーロ・ガードナー。天才の相棒と荷物運びと用心棒と相棒のトレーニング指導の全部を任されている男だ! よろしくな!」
隣で「おい、なんだトレーニング指導って」とぼやいているデュセルを押しのけ、握手のためか手を差し出してくる。分厚くてごわごわした大きな手だ。
そんな暑苦しくもさっぱりしたピエーロの登場で、完全に先程までの緊張や強張った空気は消えていた。
「それでボウズ、名前は?」
握手をしながら肩をバシバシと叩かれ、よろめきながらも答える。
「俺は流進、こっちはその……」
記憶がない事、身元不明な事、それに自らの病気と拳銃の所持……仮にこいつらと友好的にかかわるのならば、話すことはたくさんある。
「……長くなるから、少し休ませてくれ」
そういって、とりあえずはこの場を離れて考えることにした。
「どうした、早く来い」
あっけにとられている内に、デュセルはさっさと歩き始めてしまう。
「い、行こう」
何が起きたのか分からないといった様子のスノウの手を取り、デュセルの後を追った。
------無言のまま数分灰色の入り組んだ町の中を歩き、少し開けた通りに出る。すると、中型の運搬トラックの荷台部分が突っ込んだ、地下あわせて三階建てのゲームセンターがすぐに目に入った。
トラックの運転席はゲームセンターの入口から突き出ており、立体感を醸し出すはずだった外の階段は崩れ、更に周囲の崩れかけたマンション等と並んでいるので、より廃れた雰囲気が出ている。
「ついたぞ、これが俺"たち"の"研究室"だ」
デュセルはそう二つの気になることを言うと、トラックの隅からゲームセンターの中に入っていく。といっても、こちらは足のもたつくスノウと手をつないだままだったので、結構離れていたのだが。
「あんなやつが他にもいるのか? それに研究室って……」
どう見ても、崩れかけたゲームセンターである。それに、微かではあるが血を引きずったような跡が地面に見られる。
「いこ」
そう、入るのに躊躇していた時、スノウが手を引っ張って歩き出した。
「いや待てって、なんか危なげだし、いったん様子を見てからの方が……」
恥ずかしながら、先日の化け物との戦闘から少し慎重になっている。だが、スノウは確信に満ちた青い瞳を返してきた。
「だいじょぶ、あの人は怖くない。奥にいる大きな人も優しい人」
ほんのり笑いながらそう語るスノウから、もしかするとスノウはデュセルの事を知っているのかもしれない。もしそうなら、スノウの記憶に関することが分かるかもしれない。もしかすると、家族かもしれない可能性だってある。
「そっか……ならまぁ、行きますかね」
家族や知り合いだった場合、スノウを引き取られるかもしれないが、それはスノウのためである。
「スノウ……」
甘く切ない、可笑しな謎の感覚に苛まれながら、デュセルの後を追ったのだった。
------「いや、知らん。お前は?」
「知るわけねぇよ、俺は年下の女は専門外だし」
不気味で薄暗い室内に入って早々に、謎の感覚は消えはて、すっ転びそうになる。
「まぁいいぜ、俺は誰とでもすぐ仲良くなれるからな!」
デュセルの奥に座っていた大柄な熊の様な大男が、むくっと立ち上がり、すっきりした笑顔で近付いてくる。
「俺はピエーロ・ガードナー。天才の相棒と荷物運びと用心棒と相棒のトレーニング指導の全部を任されている男だ! よろしくな!」
隣で「おい、なんだトレーニング指導って」とぼやいているデュセルを押しのけ、握手のためか手を差し出してくる。分厚くてごわごわした大きな手だ。
そんな暑苦しくもさっぱりしたピエーロの登場で、完全に先程までの緊張や強張った空気は消えていた。
「それでボウズ、名前は?」
握手をしながら肩をバシバシと叩かれ、よろめきながらも答える。
「俺は流進、こっちはその……」
記憶がない事、身元不明な事、それに自らの病気と拳銃の所持……仮にこいつらと友好的にかかわるのならば、話すことはたくさんある。
「……長くなるから、少し休ませてくれ」
そういって、とりあえずはこの場を離れて考えることにした。