曇り空
相変わらず空には薄い謎の雲があり、その向こうからうっすらと太陽光が射してくる。
「この光でも大丈夫かな……」
心配になるが、やると決めたからにはやろうと思い、先程の袋から鉢と肥料を取りだして、雪が積もらないところを探す。
ここは元々住宅街だったので、崩れた家屋や倒れた電柱などがあるので、雪影には困らない。
ただ、光ばかりはどうしようもない。
とりあえず解決できない問題は後にして、駐車場の隣に鉢を並べていった。
「完成」
肥料を入れ終えたいくつかの鉢が並んでいる。あとは種を植えるだけだ。
スッと、ポケットの中にある花の種が入った袋を取り出す。
そこには、擦り減ってはいるものの、色とりどりの花の写真が写っていた。
それは本当に綺麗で、昔花をたくさん育てていた時の風景が頭に浮かんでくる。
そして、消えていく……。
「この…ひどく退屈な世界で」
自然と心の声が漏れだしてくる。
「まだ明日を信じて生きて行け…と、世界が言うのなら」
屈み、種を一つずつ植えていく。
「少しでいいから、夢を見せてくれ……」
視界いっぱいに広がる花……そんな光景を夢見て、種を植え終わる。
鉢に弱い日の光が当たって、ぼんやりと黒い影を作っているのを見ると、再び灰色の雪が白かったらとな、と思った。
「汚れてない雪の影には青い影が出来て、それはとても美しい」
そして、その中に咲く花々を思い描く…それはまるで時間が止まった様に悲しく、そして暖かい風景だった。