曇り空

日記の切れ端

------どういうわけか、俺が生き残ってしまったこの世界。情報が得られない今、少しでも記録を残すために日記をつける。

 事の始まりは連鎖型の大地震だ。と言っても、俺はその時うつ病と不眠症のせいで引きこもっていたから、詳しくは知らない。

 だから、詳しく書ける事は、家が崩れて動かざるを得なくなってからだ。

 その時の空はよく覚えている。薄い灰色の膜の様な雲が、空全体を包み込んだ。そして、それから灰色の雪が降ってきたのだ。

 この雪だが、冷たくなく、解ける時間も以上に長いため、町全体が埃塗れになったように見える。

 この後、俺は精神薬が切れてしばらく動けなかった。そしてなんとか動けるようになると、周囲から人が消えていた。

 そこから、この方南町跡地で一人暮らしが始まったのだ。

当面の目的は、俺以外の生存者を探すこと。それから、昔出来なかった庭造りに挑戦してみようと思う。   

 


 それと、妙な物を見た。種を植えた翌日に、何かの物音がしたから周囲を散策した時の事だ。やけに大きな人影が瓦礫の中に見えた気がしたのだ。なにか禍々しい雰囲気があるので、そこには近寄らないようにしたい。

 たしか、あの瓦礫の跡地は、地下鉄の入り口だったかな。   
                         九月二十六日 流進 
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