私の家のお隣さん。


「そうかなー」

「そうだよ、だから少し安心した。夢中になれるものが見つかったみたいだし、隣の人のおかげで」

「え?」

「隣の人に送ったんでしょ、今の」

勘が鋭いミナトにはいつもかなわない。

「ばれてたか」

「小説家、なんてびっくりしたけど、
よかったね、不審者じゃなくて。」

「うん」

駅に着いて、ミナトとは別れた。

そのままUターンして、帰り道を静かに歩く。

確かに、大学に入ってから、ううん、今までで一番楽しかったかも、あの、本を読んでいる時間。

早く彼に伝えようと本屋から走った道のり。

あー叶わないだろうなあ、とファンレターというより、むしろラブレターになってしまった手紙の中身を思い出す。
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