ぼくはネコ
灰色の空
『捨てネコ』


これが僕の名前らしい。

たくさんのニンゲンが、そういって僕に話しかけたから。

あの日。
僕が『捨てネコ』になってから、3回の夜と昼が過ぎた。

僕は3回しか数えきれないから、本当はもっとたくさんの夜と昼が過ぎたけど。


2回分の夜と昼の時間、僕はたくさん鳴いた。

お母さんを呼んだ。
兄弟を呼んだ。
お腹がすいて鳴いた。
寒くて鳴いた。
怖くて鳴いた。


2回分の夜と昼の時間を鳴いても、僕はひとりぼっちだった。

3回目の夜、お母さんの匂いを忘れた。兄弟の声も忘れた。


それより、お腹がすいた。

そのことだけしか考えられなかった。
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