ラッキーセブン部
第十四話 突然の告白
三年目の文化祭初日が今日はもう終わった。今までとは違う文化祭の過ごし方。どれもこれもこの部活のせいなんだろうな。嫌いではないけど、もう少し早くこの部活のメンバーに出会って、もっと長く一緒にいたかった…。それは、私の叶わないわがままか。

「やっと、一日目終わったな!あと、二日もあると思うと少しだけ気が重いがな」
「正弥がほとんど、マジックやってたからね。疲れるのも無理はないよ」
「俺もこき使われて疲れたんだけど…」
「俺は楽しかったですよ。笹井先輩はどうでした?」
「うん…。私も楽しかった」
「「笹井先輩がそう言うなら俺も!」」
「…」

この2人はいつも声が揃ってて、すごい。いつの間に打ち合わせをしてるんだろうって思っちゃう。2人とも疲れたとは言っているけど、マジックをしていて楽しそうに見えたのは私だけではないはず。

「あ、そうそう。俺、今日思った事があるんだけどいい?」

私がそんな事を考えていると、坊ちゃんは伸びをしながら荻野にそう聞いた。

「ん?栄、どうした?」
「一つ。隼一はどうして、俺達の部活の成り立ちを知ってたの?一回も話した事ないと思うけど…」

そういえば、近藤が余興の時に何かを流暢に話してた気はする。というか、この私でさえ、この部活の成り立ちを知らないのに。近藤が知っているなんて、たしかに不思議…。

「それは俺も気になった。どうなんだ?隼一」
「俺の姉さんから…前から聞いてた。俺の姉さん。今、高3なんだけど、その姉さんの友達の妹が『7』を探している人達の事を探してるっていう話を聞いて、この部の人達の事なんだ〜って、つい最近気付いた」
「ちょっ!ちょっと待った!その友達もしくは妹に会ったことあるのか?」
「…あるわけないだろ。姉さんに聞いただけなんだから」
「じゃあ、隼一のお姉さんに合わせてくれないか?」

珍しく坊ちゃんが隼一の話に食らいついていた。それよりも驚いたのは近藤に年が近いお姉さんがいた事だけど。

「俺の姉さんに…?別に良いけど」
「じゃあ、文化祭終わった後の土曜日にでも隼一の家に行くね」
「栄が行くなら、俺も行かないとな」

荻野と坊ちゃんは顔を見合わせて笑った。この2人は本当に仲が良い。それを見て近藤は少し顔を引きつらせていた。

「栄先輩。それが一つって事は、他にもあるんですか?」

すると、倉石君が首をかしげながら坊ちゃんに質問をした。

「うん。もう一つは皆が関係ある事だよ」
「私も?」
「はい。昨日の隼一との約束のことです」
「文化祭の余興に出る代わりに私と散歩したいってやつね」
「だけど、隼一だけっていうのも何だかおかしいと思ったし、俺も笹井先輩と散歩したいと思ったので、この文化祭のあと2日間を午前、午後と分けて1人ずつが笹井先輩と文化祭を楽しむっていうのはどうですか?」

確かに私も何で隼一とだけ散歩しなければいけないのかと思っていたけど、そんな提案が坊ちゃんから出されるとは思ってなかった。その案は良いとは思うけど、私はできればそんな約束無しで、このメンバー全員と一緒に文化祭を楽しみたかったんだけど…。
皆は…。

「俺は別に構わない。栄がそうしたいっていうんならそうする」
「お、俺もその案、良いと思います!」
「…少しだけ納得いかないけど…フェアって事か」

賛成の様子だった。ここは私が反対してはいけない空気だよね…。

「分かった。じゃあ、明日は一年と、明後日は二年と文化祭を周る事にする…」

私がそう言うと皆は一様に喜んでいた。たまには、こういうのも良いか。校内の他の出し物見たいって思ってたし。

ー2日目の午前ー

「じゃあ、お店の方はよろしくね。お昼には帰ってくるから」
「はい!先輩。楽しんできてくださいね」

私は午前中、隼一と校内を周る事にした。だけど、隼一はさっきから私の横でパンフレットとにらめっこをしていた。

「えっと、私とどこを周りたいの?」
「…そうだな。じゃあ、迷路に行ってもいいか?」
「うん」

私はてっきり、模擬店に行くのかと思ったけど…。近藤が迷路…。似合わない。迷路なのに迷わず出てきそう。というか、そもそも迷路に行かなさそう。
近藤は私の前を歩いて行っている。一緒に散歩なんだから並んで歩かないのかな。

「ここだ」

すると、近藤は一番隅っこの教室の前で止まった。ここって…。

「俺の教室だ」
「迷路に行くんじゃなかったの?」
「いや…ここで迷路を開催するはずだったんだが…俺が教室に行かない間に場所替えされてたみたいだ」
「え…?さっき、パンフレット見てたじゃない。それに近藤の教室なんだから文化祭の準備の時に来てるでしょ?」
「あぁ…俺はほとんど部室にいたから今日、初めて来た。パンフレットは別の場所を見てたし。…でも、俺はこの方が好都合だ」
「好都合?」

好都合って…こんな何もない教室だと、全く文化祭を楽しめないと思うんだけど。
近藤は教室に入って行って窓を開けて外を見た。
よく分からないけど…光の反射で近藤がかっこ良く見える。
私もつられて教室の中に入り、窓の外を見た。
校庭ではちょうど、クイズ大会をしているみたいで喧噪が聞こえてきた。すると、下の方から誰かの声が聞こえてきた。

「おーい!!近藤!!クラスの手伝いしてくれ!!聞こえてるか?おーい!!」

どうやら、近藤のクラスの人が近藤に向かって叫んでいるみたいだった。それを聞いて、近藤はとても嫌そうな顔をしながら下を見てから、ゆっくりと窓を閉めた。

「良いの?行かなくても…」

私がそう近藤に問うと、 近藤は苦笑いをしながら、私の事を見た。

「…じゃあ、先輩に言う事を言ってから行くよ」

そして、近藤は私の目をまっすぐ見て、一瞬間を開けてから口を開いた。

「笹井先輩、単刀直入に言わしてもらう。俺は…笹井先輩が好きだ。俺と付き合ってくれ」

その言葉を聞いた瞬間、私は周りの喧騒など、一切、私の耳に入って来なかった。そして、近藤の言葉が私の頭の中で反芻していた。
その度に胸がドキドキと鳴っている。今、私は近藤に告白を…されたの?近藤に…?


「わ、私の事が好きって…冗談だよね?」
「俺は意味もなく、冗談は言わない。だから、この場所を選んだ理由も分かってほしい」

近藤は私の目をまっすぐに見つめていた。本当に冗談を言っていないみたい…。でも、それが本当だとしても困る。まさか、このタイミングで言われるとは…。
私は近藤の事を嫌いではない。だけど、異性として見れるかと言われると…少し悩んでしまう。
私がうつむいて黙っていると、近藤は言葉を続けた。

「笹井先輩がどんな答えを出したとしても俺は諦めない。例え、あの人の事が好きだとしても俺は諦めない」

私は近藤の言っているあの人というのがよく分からなかったけど、近藤の強い意志は分かった。私もそれなりにちゃんとした返事を出さないといけない。
私は…。

「私は、近藤の事、嫌いじゃないよ。…だけど、まだ異性としては見れないみたい。だから、私は近藤と付き合えない…かな」
「…そうか」

告白されたの初めてだからこのあとは、どうすれば良いんだろう。何か気まずいな…。断り方にも少し問題があったと思うし。
すると、近藤はちょっと考えてから口を開いた。

「笹井先輩が暗い顔しないでくれよ。俺はさっきも言った通り諦める気はないし。卒業まではまだ時間がある。俺はこれからクラスの手伝いに行くから、笹井先輩は時間になるまで友達とどこかを周ってて…くれ」

近藤はそう言い残すと私を置いて教室を走って出て行った。
あいつがちゃんとクラスの手伝いなんかするんだろうか…。私にはこの場から出て行くための言い訳のような気もした。
本当に近藤をフって良かったのかな。
< 16 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop