ラッキーセブン部
第二話 『7』の日
俺がまだ、高校一年で栄とまだ、あまり仲が良くなかった頃の話…。

「今日は7日か…じゃあ、出席番号7番の荻野。答えはなんだ」
「-3±√13です」
「正解だ。さすがだな」
「…荻野、すごい!」
「…どうも…」

笠森は俺の後ろから耳元でそう囁いた。勉強なんて、学校の授業さえちゃんと聴いてやってれば、基礎ぐらいはつくと思うけどな。それにしても、こいつ、妙に馴れ馴れしいな…。授業くらい真面目に、一人で受けてくれよ。

「荻野〜。はい、これ」
「…授業中だぞ。あとにしろ」
「いいからちょっと見て!」
「あぁ、もう…」

俺は強引に渡された紙を仕方なく見ることにした。紙はさっき、数学の問題のプリントとして配られた紙だった。まったく、本当にバカだ。何が書いてあるんだ?

『下の絵は、吉田先生(数学の先生)』
「あはは!何だよこれ!」

いきなりのクオリティの高さの絵に俺は、笑っていた。しかも、結構大きな声で…。
気づいた時はもう、遅く。先生が険しい顔をしながら、こっちに近づいてきた。これは、やばい…。

「どうした。荻野〜?何がそんなにおかしいんだ?」
「え、いや、あの、その…、自分で解いた問題の答えがあまりにもおかしすぎて笑ってしまいました」
「そうか。そうか。どんな答えだ」
「あ、これです」
「あー、確かにおかしいな」

あれ?こんな回答でokなのか?怒られずに済むかも…?

「じゃあ、授業を続ける。荻野と笠森はあとで、職員室に来るように」

…そんなわけないよな。というか先生は笠森も同伴だっていう事をどうやって分かったんだろう?
…あ。
机の上にはパニックしていて、隠し忘れた笠森の名前付きの絵があった。なるほど、先生が素直なわけだ。

「荻野〜。どうして、ばれたんだよ。俺は、一言も何も言わなかったはず…なのに」
「予知能力じゃないのか?とにかく…あとで、職員室に一緒に来いよ」
「…わかった」

何でって、授業中にこんなのを俺みたいなのに渡すからだろ…。本当にバカなやつ、名前さえ書かなければ良かったのに。

授業が終わると俺達は職員室に行った。しかし、先生はあまり叱る気はない様子だった。

「君達ね〜。まだ、一年生だから大丈夫。という事はないんだよ?授業は大切にしないと…まぁ、今日は荻野に免じて笠森も許してやるが今度はするんじゃないぞ」
「「はい」」
「というわけで、荻野。お前は7番だ。体育館掃除は今日だったよな?」
「…はい」
「2倍に綺麗にしてもらう」
「…はい」

吉田先生は掃除の鬼だ。少しでも汚れが残っていたら、殺されてしまう。それは普通の説教よりも、怖いことだ。しかし、俺は今日、残念な事に大切な用事がある。だから、掃除なんてことをしてる暇はないんだ。

「あの…明日では、ダメですか?掃除…」
「…ダメだ。今日が7日だから、代わりなんて入れれるわけないだろう?」
「代わりなら俺がやる!」
「お前はダメだ」
「何でですか!」
「君が理事長の息子だからという一点に尽きるよ…」
「そんなの、差別じゃないですか!」
「…笠森。良いよ。俺、やるから」
「荻野〜」

仕方ない…サッサとやって、早めに帰ろう…。

ピッピッピッ

俺が職員室から出ようとすると笠森はポケットから携帯を取り出し何かをし始めた。

「何やってんだよ」
「俺の家に電話するんだよ」
「電話って、お前、さっきから7しか押してないじゃねぇか」
「それが俺の家の番号なの。ちなみに、俺も7ばっかだよ。あ、もしもし?あのさ〜今日の体育館掃除、無しにしてくれる?何でって…?俺の親友が今日、用事があるのに無理矢理やらされそうになってるからだよ。名前?
おぎ…。いや、正弥だよ。うん。そう、出席番号7のね。じゃあ、よろしく」

俺と吉田先生は唖然としながら、笠森を見ていた。これが、理事長の息子の力ってやつか…。やっぱり、こいつ変な奴だ。俺のためにそこまでするなんて。笠森は携帯をしまうと俺にニコリと笑った。

「じゃあ、行こう。正弥」
「……あぁ、そうだな。栄」

吉田先生は苦虫を潰したような顔で俺達を見て、何も言わずに職員室から出て行ってしまった。俺達の勝ち…みたいだな。

「そういえば、用事って何があるの?」
「今日が妹の誕生日なんだよ。だから、誕プレを買うんだけど、それが早く行かないと買えないから焦ってた。栄には感謝してるよ」
「じゃあ、親友になってくれんのか!」
「いや、そこまでは…」

俺は別に親友になるとは言っていないが栄は嬉しそうに俺に笑っていた。

掃除がなくなったしラッキーかな。

「あ、ちなみに明日は俺の掃除当番だから、手伝ってね」
「……っ!」
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