ラッキーセブン部
第一話 ラッキーセブン部?

「うぁぁ!紙が!」

目の前の先輩が大量の紙を落としてしまっていた。目の前でそれが起こったのに手伝わないのは失礼かなと思い、俺が紙を拾うのを手伝うとなぜか、その先輩は俺の行動に感動していた…。

「ありがとう!やっぱ、俺は今日ラッキーなんだな!」
「は、はい…」

俺は先輩に紙を渡して、去ろうとすると…。

「倉石佳介…か。これも、何かの縁だ。俺達の部活に入ってくれ」
「はい?というか、なんで俺の名前を?」

先輩は俺に何かを手渡した。手の平をみると、俺の生徒手帳だった。なるほど…これで俺の名前を…って、俺、これをいつ落としたんだろう?

「言っとくが、盗んでないからな。お前の懐から落ちたんだよ。そんな事より、お願いだ!君も、ラッキー欲しいだろう?」
「えっと…そんな事いわれましても…」
「分かった。放課後、ここに来てくれ」

先輩はそう言って、さっき落とした大量の紙の中から一枚、俺に、渡した。

『ラッキーセブン部
この部活に入れば、楽しい日々を過ごすことができます!7の数字を持っている方は是非、我が部に入部をしてください!※定員7名です。我が部に入りたい人は生徒会室横の部屋に来てください。』


ラッキー…セブン部?随分と、可愛い名前だな…というか、書いてある内容は怪しすぎるだろ…。

「俺、ここに入る気ないんですけど……」

……

顔をあげて、断ろうとしたら、目の前にはもう、先輩の姿はなかった…。
どうしよう…。きちんと断りに行ったほうがいいかな?
でも…この部活、興味ない訳ではないし、他に入りたい所もこれといってないし、放課後行ってみるか。

そして放課後、俺は生徒会室横の部屋に行った。なんで、また生徒会室横なのだろうか…。
ドアを開けると、2人の先輩が同時にこちらに向いた。

「お!来たか!えーと、こうすけだっけ?」
「佳介です…」
「そうそう。で、入ってくれるの?」

さっき、紙を落としていた先輩は、無邪気に笑いかけてきている。これは…断りにくいな。見学とか、言っとけば良いか。

「まだ、それは決まってません。一応、見学にしにきただけですから」
「見学っていってもな…。別に見ることないぜ?この部活は入るってことに意味があるんだ。俺がこの部活を作ろうと思った時は、たくさん、ラッキーな事が起きたんだぜ。それがさぁ〜………」

よく分からないが…この先輩の、話は長くなりそうだ…。見学することないって…じゃあ、どうすればいいだろう。

「正弥〜。困ってるぞ。そんなんだから、部員が増えないんだよ〜」
「うるせ。お前に言われたくねぇよ」

部員はこの2人だけのようだ…。

「じゃあ、先輩。僕以外で1年生の部員って、いるんですか?」
「……今のところは、いないな。こいつが声掛けたやつは絶対、来ないし、7じゃないし…。女ばっかだし」
「正弥〜。余計な事、言うなよ。
えーと、こうすけ?とりあえず、入部届に名前書きなよ」
「だから…佳介です…」

紙を落としていない方の先輩は俺に、入部届の紙を勧めてくるが、俺は黙って突き返した。しかし、先輩は笑顔で渡そうとする。この無言のやり取りは怖いって…。

「栄…お前は勧誘するな。部員が一向に増えないから…。……佳介…。一文字でも良いから名前をここに書いてみろよ。きっと、良い事あるからさ。なっ?」
「まぁ、一文字なら…」

俺は先輩達の推しに負けて、入部届に名前を一文字だけ書くことにした。

「倉…よし。okじゃあ、今日は、解散。今日、良い事あったら、また明日もここに来いよ?俺達は佳介の事、待ってるから」

解散って…本当に何もしてなかったよ。良い事、良い事って言うけど、何かの確証でもあるのかな?

「佳介…急げ、そろそろ先生が来る時間だから。お前だけでも、外へ早く出ろ」

俺は先輩に背中をおされて、部屋から追い出されてしまった。しかも、ちょうど角を曲がってこっちに来る先生の姿が見えた。あの二人は逃げなくて良いのかな?というより…なぜ、先生が来たらまずいのだろうか?

「倉石くん?倉石くんじゃない?ここの高校に入ったんだ」

先生が向かって来るのとは逆の方向から、声をかけられ振り向くとそこには、中学の時、好きだった先輩がそこに立っていた。接点は委員が同じということしかなかったから、先輩がどこの高校に行ったのかも聞けず、俺は先輩の事を諦めて、同学年の子と付き合うという今に至っている。

「せ、先輩!この高校だったんですね。お、お久しぶりです!」
「私の事、覚えててくれたんだ。嬉しいな。でも、私は今年で卒業するからまた会えなくなるけどね…」

色々と変わっていない先輩をみてなぜか俺の心が騒いだ。もしかして、俺…先輩の事を諦めきれてない?いや、でも俺には彼女いるし…先輩だって、こんなに可愛いんだから、彼氏ぐらい、いるだろう。

「倉石くん…そういえば、こんな所でなにしてるの?部活は?」
「あ…えっと…」

この状況をどう説明しよう。ラッキーセブン部に見学しに来ていたなんて言ったら、きっと笑われるに違いない。ここは、何とか誤魔化さないと…。

「えっと…俺、まだ部活動決めてないんですよ…。今、一つずつ見学しに行ってて…」
「へぇー。それで今日は非公認のラッキーセブン部を見にきたってワケなのね。さすが、倉石くん。情報早いね。入ったら?」

先輩の一言一言に俺は今、驚いている。まず、俺はなぜか先輩に、褒められている、そして、期待に満ちた目で見られている…。そして、今、見学しに行った部活は非公認だと言われた…。非公認ってそれって、入っても入ったって事にならないわけだよね?なのに…入部届を一文字だけ書かされた…これは!詐欺か!『千と●●の神隠し』で一文字しか、自分の名前じゃないみたいな発想だったのか?どうしようか…今、この仮と思われる部室に戻ったとしても、先生の説教に付き合わされるだけだよな…まぁ、明日でも隙をみれば取り戻せるかもしれないし、今日はやめておこう…。

「ねぇ、倉石くん。もしも、倉石くんがラッキーセブン部に入ってくれると嬉しいな〜」
「え?」

なんで俺が入ると、先輩が嬉しいんだろう?も、もしかして…。

「先輩はこの部活に入ってるんですか?」

これしか、理由はないよな…。それなら、納得いくし。先輩は少し気まずそうにはにかんでから口を開いた。

「…入ってないよ。私はまったく『7』を持ってないもの…。けど私は…欲しいの…あの人との接点が」
「あ、あの人?」
「部長。…私ね、部長のファンなの。だから、倉石くんが入ってくれれば、情報とか入ってきやすいじゃない?」

先輩がぶ、部長のファン⁈まだ、部長が誰なのか分からないけど、あの二人の先輩のどっちかだよな?…でも、俺は今、先輩に頼られてるんだよな。前、好きだったっていうよしみもあるし、ここは先輩の力になってあげようかな…
そう思えば、入りたくなる部活だ。

「俺、この部活に入ることにしますよ。先輩」
「本当?じゃあ、これからよろしくね。倉石くんの連絡先、教えてもらってもいい?なかなか、会うのって大変だと思うから、ね」
「あ、はい!!」

これって…ラッキー?

次の日、俺は先輩との約束通り、ラッキーセブン部に入部する事にした。

「やっぱ、入ってくれるのか!
佳介!」
「一応、ラッキーなこと起こったので…」
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