愛し*愛しの旦那サマ。


「よくここのレンタルショップ使うんですかぁ?」

「まぁ時々」

「私、今日初めてここに来たんです~。実は今、引越し考えてるんですけどぉ、この辺の物件にしようかなぁ~って」

「ふーん……」


臣くんのそっけない態度にも構わずに、ぐいぐい話かける彼女。

ホントに私のことなんて視界に入ってなさそうだったので、


「ん、ん゛ん゛……」


と、咳払いをして、存在をアピールしてみることにした。

すると、


「あっ、」


と、ようやく臣くんの横にいる幸代さんの存在に気がついたようで、


「すみません、お連れの方がいるの気がつかなくて……」


と、右手のひらを口にあてて、私を見る。そんな彼女に、


「こんばんは。わたくし、櫻井の妻です」


とりあえず、笑顔で挨拶。

すると、


「えっ。奥様?」


と、彼女が鋭く反応を示す。

そして、一瞬だけ間をあけると、彼女はニッコリと微笑んで、


「私、櫻井先生の秘書をしている藤枝と申します」


と、軽く頭を下げた。


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