愛し*愛しの旦那サマ。

瞼を完全に閉じれば直ぐにでも熟睡してしまいそうな彼女に、


「お前はどうなの?」


と、逆に問いかける。

勿論、彼女の答えは、


「愛してる……」


で、


「臣くん、大好しゅき……」


睡魔に襲われながら、何度もその言葉を繰り返す。

そんな彼女の背中に空いた左腕を回し、ゆっくり抱き寄せると、


「……」


微かな寝息が聞こえ始めた。


“愛してるって言って”


彼女から、よくその言葉を強請られる。

昔、別の女性達からその言葉を求められ、正直、嫌気がさしていた事もあった。

だけど、彼女にその言葉を強請られるのは嫌いじゃない。

いや。

むしろ、心地良く耳に響いてくる程だ。


“臣くん”


と、名前を呼ばれることも、


“愛してる”


の言葉を強請る声も、何だかんだ言っても、結局は心地良い。


そんな風に自分を思わせるのは、彼女、幸代だけだ。


それは今迄も、今も。勿論、これから先もずっと。



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