たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
高嶺の花だと分かっていても
その日の夜、千影は行きつけのレストラン・バーであるリヴィードに足を運んでいた。

昼間、電話をした相手が来てくれているだろうか。これは、彼女にとっては一つの賭けであるともいえる。

相手が来てくれていれば問題ない。なんとかして、その相手を味方につけ、自分の想いを叶えるのだ。今の千影にはそんな思いしかない。

もっとも、『来る』という約束はもらっているが、それがキャンセルされたらどうしよう。そんな不安が微かにではあるが生まれている。

しかし、今さら引き返すことはできない。来ていなければ、どうして約束を破ったのだと相手に文句を言うことができる。その流れで協力させるというのも選択肢の一つだろう。そんなことを考えながら、千影はゆっくりとリヴィードの中へ入っていた。

レストランとバーを兼ねているせいか、店内の照明はどこか薄暗い。そのため、なかなか見渡すことができないが、少し経てば目も慣れてくる。そんな彼女の視界に映る人影。ということは、約束を守ってくれたんだ。そのことに安心した千影は、相手のそばに近寄っていた。



「お待たせして申し訳ありません」


「本当だよね。よっぽど帰ろうと思ったんだよ。でも、千影さんのあの声を聞いたらほっておけないって思ったんだよね」


「ありがとうございます、アンジー様。そして、昼間は見苦しいところをお見せいたしました」



そう。千影が呼びだした相手は、ファエロアのメイン・デザイナーでもあるアンジー。彼の前の椅子に腰かけながら、千影はゆっくりと口を開いていた。
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