たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
「惟! 惟! 返事してよ! お願いだから、返事してよ!」



半狂乱になりながら叫ぶことしか亜紀はできない。そんな彼女を後ろからそっと抱きしめてくる雅弥。そのまま彼は彼女を安心させるようにゆっくりと言葉を紡いでいく。



「お嬢様、山県様は大丈夫です。傷は深いようにお見受けしますが、急所は外れています。ですから、そんなに悲しまれないで。すぐに救急車が到着します。それまでの間、辛抱してください」



しかし、そんな雅弥の声が亜紀の耳に入っている気配はない。今の彼女はなんとかして惟の声を聞きたいというように必死になって叫ぶことしかできない。



「嘘よ。そんなの気休めよ。こんなに血が出てるのに。どうして、そんなこと言えるのよ。ねえ、惟、返事してよ。もう一度、私の名前、呼んでちょうだい!」



惟の体を揺さぶるようにして亜紀は叫び続ける。その時、けたたましい音を立てて救急車が到着する。彼らはテキパキと動くと惟に刺さっていた刃物を抜くと止血作業に入っている。

だが、その作業中に痙攣したように惟の体が跳ね上がる。それを目にした瞬間、亜紀が狂ったように叫ぶのを止めることができない。



「惟! 惟! おいていかないでよ。私を一人にしないでよ!」


「お嬢様! 落ちついてください。山県様は大丈夫です。今からきちんと手当をするんです。ですから、落ちついてください!」



そんな雅弥の言葉も耳に入っていないのだろう。亜紀はここが学校の敷地内だということも忘れたように泣き叫ぶだけ。そんな中、惟が救急車の中に運ばれていく。それに同乗しようと動き始めた亜紀。だが、次の瞬間、彼女自身も完全に意識を手放してしまっているのだった。



to be continued


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