たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
「わかりました……グラントさんがそうしたいって思うならそうしてください。惟もきっとダメだって言わないと思うし」


「ありがとう。じゃあ、そうと決まったら、できるだけ早く仕上げないとね。そうだ。次のコレクションのラスト、惟と一緒にステージに上がる?」



この提案は亜紀にすれば、思いもかけないものだろう。彼女もマリエがウェディングドレスだということは知っている。そして、コレクションの最後を彩るのがそのマリエであるということも。

たしかに彼女も恋に恋する女子高生。となればウェディングドレスに対する憧れは、人並み以上にある。そして、ファエロアのメインデザイナーであるアンジーが彼女に似合うようにすると言っているのだ。そのドレスを着たい、という思いは間違いなく彼女の中で大きくなっていく。

しかし、そこで彼の告げたもう一つの言葉に亜紀は顔を真っ赤にしてしまっていた。何を思っているのか、彼は惟と一緒にステージに上がらないかと誘ってきたのだ。だが、これは激しく羞恥心を刺激することでしかない。

ウェディングドレスはたしかに憧れる。だが、それを着て惟と並ぶということは結婚式と変わらない。コレクションに集まっている多くの人々の前でそんな姿を晒す。そんなことになったら、恥ずかしさのあまり死ねる。そう思った亜紀は、金魚のように口をパクパクさせるだけ。

だが、頭の中ではその時の姿を想像しているのだろう。ポッポと湯気が出そうなほど赤くなった顔を彼女は必死になって手で隠している。



「グ、グラントさん……そんな恥ずかしいこと、できません!」


「そう? でも、本番はコレクションの時以上に人が集まると思うよ?」
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