たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
あの状態の彼女を目にして平静でいられるはずがない。あの時の亜紀は本気で自分を傷つけようとしていた。いや、それだけではなく死ぬことだけを考えていた。

そんな彼女を前にして、彼が取れる道は一つだけ。だからこそ、彼は彼女のことを諦めるという結論にいたったのだ。だが、そのことを口にするつもりはないのだろう。アンジーはどこか寂しい笑顔を浮かべながら雅弥に応えている。



「僕が亜紀ちゃんに対してもっている思いは間違いなく恋だよ」


「グラント様……」



アンジーの言葉から、彼の思いの強さと深さを感じたのだろう。雅弥が息を飲んだような調子で呼びかけている。それに対してアンジーは彼の顔を見ようとはせずに話し続けている。



「でもね。たとえ、これが恋だとしても僕は二度と亜紀ちゃんに思いはぶつけない。だって、そんなことをすれば彼女が不幸になる。僕は彼女に幸せになってほしい。それだけが望みなんだ。だとしたら、その役目は僕じゃなくて惟になるよね。竹原さんもそう思ってるんじゃないの?」



そう言ったアンジーはやっと雅弥の顔に視線を戻している。そこに浮かんでいる表情からは、清々しさも感じられる。そのことから彼の思いが本心からだということを悟ったのだろう。雅弥は深々と腰を折ると「承知いたしました」と口にする。その彼に、アンジーは先ほどまでとは変わった調子で声をかけていた。



「でも、これは僕と君の間の秘密だよ。分かってくれるよね」



その声に雅弥はますます深く腰を折ることしかできない。その姿を見るアンジーの瞳に光るものがあるのを雅弥は見ないようにしようとしているかのようだった。



to be continued


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