たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
永遠の誓いのキスを
アンジーから惟が隣の病室にいるときかされた。だというのに、亜紀はなかなかそこへと行く決心がついていないようだった。

だが、これは惟のことを拒絶しているからではない。むしろ、その逆。彼のことを心配しすぎるあまり、そばに行くことを躊躇ってしまっているのだった。

もっとも、そのことを彼女自身が認識しているのかというと疑問しか残らない。それでも、アンジーと話しているうちに自分の気持ちというものにもハッキリと気がついたのは間違いない。

そうなれば、亜紀ができることは一つだけ。先ほど、彼女が眠るまで一緒にいた拓実は病院長のもとに行ったきり帰ってこない。だが、これがある意味での好機であることに違いはない。

なにしろ、拓実が亜紀のことを異様なまでに心配するのはいつものこと。となれば、こうやって入院するような事態になった以上、彼がどのような反応をみせるのか。

そのことを教えられずとも分かっている亜紀は、苦笑を浮かべるだけ。とはいえ、惟に会うとすれば、拓実がここに戻ってくるまでしかチャンスはない。そう思った亜紀は看護師がやってこないことを祈りつつ、コッソリと病室から抜け出していた。



「えっと……アンジーは惟の病室は隣だって言ってたけど本当かしら?」



そんなことを呟きながら、亜紀はキョロキョロとあたりを見渡している。今、彼女がいた病室は間違いなく特別室だろう。なぜなら、彼女のような病気ともいえない症状の患者を収容するのは本来ならば大部屋のはず。だというのに、彼女がいた部屋は個室。

間違いなく、拓実が無駄に一條という家の力を使ったのだ。そう思った亜紀は、ため息をつくことしかできない。そんな時、ガチャリという音とともに、隣の扉が開いていた。
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