たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
「でも、それって惟がそう思っているだけじゃない。私はちゃんと嫌だって言ったわよ。それなのに、こんなことするなんて、恥ずかしいじゃないの」


「亜紀がそう言う方が分からないよ。どうして、恥ずかしいって言うの? 僕たち、付き合ってるんでしょう? だったら、見せびらかしたって問題ないと思うんだけど?」



惟のその言葉に亜紀は頭を抱えたくなっている。たしかに、彼と付き合っているのは間違いない。それどころか、いずれは結婚しようとまで思っている。

だが、だからといって見せびらかすようなことをする必要があるんだろうか。それが今の亜紀の正直な気持ちだろう。だからこそ、彼女はコッソリと惟の耳元で囁きかけている。



「あのね。こういうことって見せびらかすことじゃないと思うのよ。絶対に、今度、学校に行ったら大変な目にあうわ。そうなったら、私が困るってこと、分かってくれないの?」


「別に困ることじゃないと思うよ。言いたい人には好きなこと言わせておけばいいの。僕たちのこと興味本位であれこれ言う人がいるのは間違いないんだし。それより、ちゃんと客席に挨拶しようね」



そう言うなり、惟は亜紀の体をクルリと客席側に向けている。ライトの光が並んでいる二人をしっかりととらえている。そのことに気がつき、顔から湯気が出ている亜紀だが、ここで卒倒してしまってはいけない。そう思って必死になって笑顔を浮かべている。

もっとも、観客たちはそんな彼女の葛藤には気がついていないのだろう。ウェディングドレスの亜紀と白いタキシードの惟。どう見てもお似合いとしか言いようのない二人の姿に盛大な拍手を送っている。その光景に満足気な表情を浮かべた惟は、亜紀の肩を軽くつついていた。
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