御劔 光の風3
早くに両親を亡くし、補助が必要な幼い時分に王位を継承したことは民衆からも多少の情がわいたものの、やはり冷たいという印象は拭えなかった。

それは雷神の力を受け継ぐ戦士であることも力を貸したと思う。

しかし当初カルサが雷神であることは公にはされていなかった。

ごく限られた者の内でしか知らされていないことが、いつしか国全体に伝わってしまったのだ。

未だかつて国から大々的に雷神のことを語られたことはない。

カルサが無闇に雷神の力を使わないのもその理由が一つにあった。

穏やかで太陽の様な先代王と比べられることは少なくない、カルサが年月をかけて少しずつ評価を上げていった先が今なのだ。

「母上が好きだった本、俺も好きだった本だ。気に入ればいいが。」

やさしい表情の中にはきっと短くても温かい幼少期の思い出が浮かんでいるだろう。

カルサの大切な思い出がつまった絵本がいまリュナの手の中にある。

「きっと気に入ります。…ありがとう。」

嬉しくて、その言葉しか出てこなかった。

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