御劔 光の風3
「先に俺の部屋に行って待っていてくれ。会議の後、すぐに向かう。」

「分かった。」

足を止める事無く会話が終わり、お互いに目的地へと進みだした。

言葉を交わした後にすぐ外された視線は貴未の感情の昂りを表している。

貴未についていく日向はすれ違い去っていくカルサの後ろ姿を心配そうに見ていた。

前を歩く貴未の表情は不機嫌にも見える、しかしおそらく貴未は不機嫌とはまた違った感情に捕らわれているのだろう。

怒りに似た何か、その名前は見付けられなかったが日向はそう感じている。

しばらく歩いて目的の部屋に着くと貴未は念の為に扉を叩いてからゆっくりと開いた。

執務室ならサルスが居たかもしれないが主が不在の私室の方には当然だが返事はない。

見渡すかぎり人の姿も気配もなかった。

二人は中の方に進み立ち止まる。

窓の向こうは明るい日差しに照らされている。

今の気分とは正反対の空に誘われるように貴未は窓辺へと向かった。

カルサの部屋の窓からは大きく広がるバルコニーと中庭が見渡せる。

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