御劔 光の風3
深く艶やかな黒い衣裳、しかしどこか違和感を覚えて仕方がない。リュナは眉をひそめ目を凝らした時に気付いたものがあった。

その艶やかさ、それは多分あまりそこに有り得る物ではない血液が付着している。

リュナは自分の中に答えを出し、再び目の前を歩いてくる女性の全身を見た。

右手の衣裳に隠れた部分、風にドレスが舞う度にささやかに見え隠れするその部分に彼女は返り血を浴びていたのだ。

「貴女…誰なの?」

リュナの鼓動が速くなっていくのが分かる、嫌な予感がしてたまらないのに彼女は何も答えてくれなかった。

無駄に殺戮を繰り返すような人物には見えないし、そうだったとしても血が部分的過ぎてその数の少なさを思わせる。

ただ言い様のない胸騒ぎが自分の近い人物だと教えてくれているような気がして冷静ではいられなかった。

「その血…その血は誰のもの?誰を傷つけたの!!?」

彼女は少し目線を下げた。

やけに血の跡が鮮やかに見えてくる、危険信号が強くリュナの中で鳴り響いていた。

悲鳴に似た叫びは風に消される事無く響きリュナの拳は強く強く握りしめられて震えている。

それでもその瞳はしっかりと目の前にいる女性を捕らえて離さない。

逃がしてはいけないと、逃げてはいけないと身体中で叫んでいる気分だった。

「彼女は知りすぎた。」

落ち着いた品のある声がリュナの耳に届く。

間違いなく目の前にいる女性が発している声だが遠くから聞こえているような音にリュナは何か不思議な感覚に陥った。

知りすぎた彼女と言われリュナの中に一人浮かんだ人物がいる。強く優しく、偉大なる人物。

「誰を…っ!?」

女性はゆっくりと首を横に振り、リュナを見た。リュナの表情は不安に満ちている。

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