御劔 光の風3
かつてオフカルスの神官としての彼女の役割は、命果てた者の魂を浄化させ次に生まれ変わる為の世界へ送る、渡しの仕事をだった。なるほど彼女なら死人の魂と触れ合う事ができる。

「今は圭といいます。」

「そうだったな。」

声こそ穏やかだが二人の心中は複雑だった。姿は違えど顔を合わせるのは太古の時代に起きたあの事件以来、シャーレスタンはそこで命を落としていた。

「マチェリラ、貴女も姿を隠す必要はないのよ。」

圭は宙に向けて声を投げる、レプリカだけが状況が分からずに圭の周りを探していた。やがて圭と貴未の間にぼんやりと光が現れると次第にそれは大きくなり人の形を作っていく。

そこに現れたのは、まぎれもなく神官マチェリラだった。

「マチェリラ様!?」

見覚えのある姿、マチェリラは生き残っていたのだとレプリカは確信した。安堵の気持ちが沸き上がり涙が溢れ出てくる。

「何故泣くの?」

マチェリラがレプリカに尋ねた。

「生きてらした事に安心しました。ほぼ全員が被害にあわれたと聞いていたものですから。本当に良かった。」

「生き残っても良い事なんてないわ。その分、痛みも苦しみも背負っていかなければいけないもの。」

消えそうな声で呟いたその言葉の中に彼女の歩んできた道の険しさが伺える。彼女に何を言えばいいのか分からず言葉を失う者が多かった。

「なんで?俺ら知り合えたじゃん。良い事あったじゃんか、な?」

そんな空気をいとも簡単に壊してしまうのが貴未の役目だった。自分の意見の同意を圭にも求め、圭は頷きマチェリラの頬を軽くつねってみせる。

「ひねくれ者。」

「うるさいわね。」

そう言葉を交わすと二人は笑いあった。それはいつかみた風景、自分より幼いマチェリラをいつもあやすようにからかっていたシャーレスタン。それは生まれ変わり圭となった今でも変わりはなかった。

「生きているだけで幸せよ。そうでしょう、カルサトルナス。」

静かにマチェリラの言葉がカルサには染みていた。それを見透かしたように圭はカルサを巻き込む。

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