御劔 光の風3
「対象者を夕刻に集める。鍛冶職人の代表とイーセル大臣に玉座の間に来るように伝えてくれ。命令は以上だ。全員下がれ。」
「はっ!」
サルスの命を受けて兵士たちは一斉に走り出す。少しずつ遠くなっていく足音に耳を傾けながら、サルスの拳は強さを増して握りしめられていった。こんな事をしても何の意味もないのかもしれない、無駄な事かもしれない。それでも何もないよりはマシだった。
攻撃は最大の防御とはよく言ったものだ。今は防御できる術が一つもないのが正直なところ、この城とて要塞に成り得ないのが実情だ。
砦のない場所で武器を持って固まっていたところで何も守れやしない。こんな時、彼がいてくれたら。
「聖…。」
拳を握ったままの右手は打ち付けるように額に当てられた。固く閉じた目、やるせない気持ちが表情に出ている。
この状況下に陥り、戦力を失ったのは痛いどころの話ではなかった。聖の安否は確認されておらず行方不明だと聞かされている。血まみれの双子の妹・紅を抱きかかえ、自身の血か返り血か分からないが彼自身も血まみれの姿で歩いていたのが彼の最後の目撃情報だった。
何か目的があって姿を消しているならいい。でももし命を落としていたら。
そう考えるだけで胸が押しつぶされそうになる。今回の襲撃事件で何人もの行方不明者や犠牲者、重症患者の名前が提出された。そこには自分に近い人物も少なくはなかった。聖も紅もナルも、そしてレプリカの名前も記されている。
リュナの側近ともいえるレプリカ、彼女は自分と関わったばかりに深い傷を負い今も生死の狭間を彷徨っている。そう思うとサルスは自分責めずにはいられなかった。
血だらけのレプリカを見た瞬間のリュナの顔が頭から離れない。
時折、言い様のない恐怖感で押し潰されそうになるのだ。身体全体が小さく縮められるような、闇に取り込まれそうな自分ではどうしようもない感覚に震えて額に強く押しあてられた手をゆっくりと下ろした。
怯える呼吸がサルスを孤独に招いていく。
「サルス。」
名前を呼ばれて我に返った。
気やすくそう呼ぶ人物が少なくなった今では名を呼ばれるだけで安心してしまう。しかも今、名前を呼んでくれたのは彼の唯一の血縁者であるカルサなのだから尚更だった。
呼ばれた方に身体を向けると予想どおり声の主がカルサだった事に安堵から笑みがこぼれる。
「はっ!」
サルスの命を受けて兵士たちは一斉に走り出す。少しずつ遠くなっていく足音に耳を傾けながら、サルスの拳は強さを増して握りしめられていった。こんな事をしても何の意味もないのかもしれない、無駄な事かもしれない。それでも何もないよりはマシだった。
攻撃は最大の防御とはよく言ったものだ。今は防御できる術が一つもないのが正直なところ、この城とて要塞に成り得ないのが実情だ。
砦のない場所で武器を持って固まっていたところで何も守れやしない。こんな時、彼がいてくれたら。
「聖…。」
拳を握ったままの右手は打ち付けるように額に当てられた。固く閉じた目、やるせない気持ちが表情に出ている。
この状況下に陥り、戦力を失ったのは痛いどころの話ではなかった。聖の安否は確認されておらず行方不明だと聞かされている。血まみれの双子の妹・紅を抱きかかえ、自身の血か返り血か分からないが彼自身も血まみれの姿で歩いていたのが彼の最後の目撃情報だった。
何か目的があって姿を消しているならいい。でももし命を落としていたら。
そう考えるだけで胸が押しつぶされそうになる。今回の襲撃事件で何人もの行方不明者や犠牲者、重症患者の名前が提出された。そこには自分に近い人物も少なくはなかった。聖も紅もナルも、そしてレプリカの名前も記されている。
リュナの側近ともいえるレプリカ、彼女は自分と関わったばかりに深い傷を負い今も生死の狭間を彷徨っている。そう思うとサルスは自分責めずにはいられなかった。
血だらけのレプリカを見た瞬間のリュナの顔が頭から離れない。
時折、言い様のない恐怖感で押し潰されそうになるのだ。身体全体が小さく縮められるような、闇に取り込まれそうな自分ではどうしようもない感覚に震えて額に強く押しあてられた手をゆっくりと下ろした。
怯える呼吸がサルスを孤独に招いていく。
「サルス。」
名前を呼ばれて我に返った。
気やすくそう呼ぶ人物が少なくなった今では名を呼ばれるだけで安心してしまう。しかも今、名前を呼んでくれたのは彼の唯一の血縁者であるカルサなのだから尚更だった。
呼ばれた方に身体を向けると予想どおり声の主がカルサだった事に安堵から笑みがこぼれる。