君の『好き』【完】
「鈴?どっかで休む??」
沙希が心配そうに私の背中を撫でた。
コートを見ると、海くんがいて、
次の試合に移っていた。
対戦相手は、うちのクラスで、吉井くんもコートに立っていた。
「大丈夫」
海くんを応援するって言ったんだから……
私は、海くんを大切にするって決めたんだから……
私は海くんを好きになる。
今さら、吉井くんの事、何を聞いても、もう、
もう……
涙を両手で消して、顔を上げると、試合が始まっていた。
「渡瀬くん!!頑張って!!」
「渡瀬くん!!行けー!!」
海くんを応援する女子たちの声。
前に前にくる女子たちに押されて、沙希と横にずれた。
海くんは、まるでバスケ部のような動きで、
ドリブルをして駆け抜けて行った。
「あれじゃあ、モテるのもしかたないな」
沙希が腕組みをして頷いた。
「キャァー!!!」
海くんがシュートを決めるたびに起こる黄色い歓声。
海くんはジャージの袖をまくって、
また走り出した。
そしてパスを受け取って、ドリブルをした時、
やる気無さそうに突っ立っていた吉井くんが、
突然海くんに向かって走り出した。
ドリブルする海くんを止めて、
パスしようとしたボールをカットしてボールを奪い、
綺麗なフォームで駆け抜けてシュートした。
「吉井くんさすがバスケ部だね、やっと本気出したか」
それから吉井くんは、海くんにぶつかっていくばかりで、
見ていて少し心配なぐらい激しくぶつかり合っていた。
「なにあのバスケ部ー。渡瀬くんの邪魔ばっかしてさー」
そして、試合がもう少しで終わる時、
吉井くんが海くんにぶつかって、ザザーッと横に倒れた。