君の『好き』【完】
海くんは少し俯いて、
また顔を上げた時、
「渡瀬!次!」
少し離れたところから名前を呼ばれて、
海くんはそのまま走って行ってしまった。
さっきの話、海くんにも聞こえていたんだろうか.......
愛莉さんが、吉井くんを亡くなったお兄さんの身代わりにしているって、
本当なんだろうか。
そんなこと......
そんなことを吉井くんに......
【愛莉が好きなのは、俺じゃない。
愛莉が俺を好きになることは絶対にない。
絶対にないんだ、この顔でいる限り】
【俺は類じゃない、類じゃない】
【もう俺は、俺でいることをやめるよ】
今までの吉井くんの言葉
お兄さんブレスレット
薬指にはめたリング
もしかして、本当に吉井くん.......
【鈴には俺が見えているよな.......
俺がちゃんと見えているよな......】
吉井くん......
「鈴?大丈夫?」
すべての言葉の意味が、繋がって、
涙がどうしようもなくこぼれ落ちた。
吉井くんは、私に.....
私に.......
【1回でいいから、俺の下の名前呼んでくれないか】
はっとして両手で口を押さえた。
吉井くんは、お兄さんの身代わりとしてじゃなくて、
ちゃんと自分を見て欲しかったんだ.......