君の『好き』【完】
教室から生徒たちが全員出て行くと、
吉井くんが体ごとこっちを向いた。
「話ってなに?」
私も吉井くんの方を向くと、吉井くんは自分の髪をくしゃくしゃっとした。
「もう、俺のことは放っておけ」
えっ.....
「鈴は優しい。
俺が怪我しているから、
いろいろ助けてくれるだろ?
そうすると俺......鈴を離したくないって思ってしまう。
いつまでも諦めることができない。
だからもう、放っておけ。
俺のためだと思って、
もう、放っておいて欲しい」
吉井くん.......
吉井くんは下を向いて、前髪をくしゃくしゃっとした。
「嫌なんだよ俺.......
渡瀬のこと、感謝してんのに、
渡瀬から鈴を奪いたいとか思っている自分が。
もう、鈴を本当に忘れたいんだ。
類が愛莉と付き合った時もそうだった......
関わらなければ、自然と忘れる。
だからもう、助けなくていいから。
それは、優しさじゃない。
俺を苦しめている」