君の『好き』【完】
助けていることが、逆に吉井くんを苦しめている......
「そんな.....私そんなつもりじゃ....」
吉井くんは、あはははっと下を向いて笑った。
「わかってるよ。
でももうほんと、俺のことはいいから。
それに、
渡瀬が好きなら、
大切に思うなら、
俺のことは.....切れ。
わかったな」
吉井くんは手を伸ばして私の頭をぽんぽんと撫でた。
「切るなんて、できない......
友達でいようって言ったじゃん。
切るなんて.......」
涙が出てしまいそうになり、目をこすった。
「頼む。
もう、俺のことは切ってくれ。
もうさ.....
俺もう......辛いんだよ」
吉井くんは私の頭から手を離して、
片手で顔を覆って下を向いた。
吉井くん......
私のしたことが、こんなに吉井くんを.......
「わかったよ、吉井くん」
吉井くんは目を真っ赤にして顔を上げ、「よし、良い子だ」と、私の前髪をくしゃくしゃっとした。
「話はそんだけ、聞いてくれてありがとな」
吉井くんは笑いながら立ち上がって、ぴょんぴょん飛んでロッカーの前に行った。
「吉井くん、今日は一緒に帰ろう。
3学期から、気をつけるようにするから。
今日は、一緒に帰ろう」
どうしてももう少し話がしたいと思った。
こんな気持ちのまま冬休みに入るなんて……
吉井くんはバッグを斜めがけした。
「やめとくよ。思い出が増えればそれだけ辛くなる。
じゃあな」
吉井くんは松葉杖をついて教室を出て行った。
そんな……
追いかけてしまったら、また吉井くんを苦しめてしまうの……?
でも、どうしても追いかけたい。
切るなんて、できない……
でもそれは、間違っている。
吉井くんの事も、海くんの事も、
苦しめる。
でも.......
私は教室を飛び出した。