ツンデレくんをくれ!
『終わったけ?』


送り主は中出。


どくっと心臓が鼓動を打ったのがわかった。


たったこれだけで嬉しく思うとか、あたしはどんだけ重症なんだ。


だって、上辺だけとはいえ心配してくれたんだよ、いかにも他人のことなんか気にしなさそうなあの中出が。


『もう少し。あと一枚』


そう送ってから確認をしたら、送られてきたのは二時間前だった。


あちゃー。なんで気付かなかったんだよ、あたし。


自分の失態に恥ずかしくなって額に手を当てる。


あたしのばかー。


パソコン嫌いだけど、いったん集中したら他のことは全然気付かなくなる質だからな、あたし。


中出、もう寝ちゃったかも。


ごめんね。


心の中で謝った。


……それにしても、中出の寝顔かあ。絶対可愛いよ。


愛想悪い顔だけど意外に童顔だから、寝顔だけ見たら絶対可愛い。


中出の寝顔を妄想してニヤニヤして、うふふふふと笑い声まであげていたら、LINEの通知が来た。


それで我に返って、恥ずかしくなってからスマホを手に取る。


「……中出?」


なんだ、起きてたんだ。


画面には『ご飯は食べたんけ?』と表示されていた。


……あ、そういえば忘れてた。


自覚したと共に腹が鳴った。


あー……腹減った。


そういや、かれこれ12時間ご飯食べてないじゃん。


でも、こんな夜中に食べたら太るしなあ……。


好きな人がいる手前、一応こういうことは気にしているのだ。


ここ、飲食禁止だからどっちみち食べられないし。


まだだったと送ると、それから中出からの返事はなかった。


……なんだったんだ、一体。


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