ツンデレくんをくれ!
あたしはスマホを机の上に置いて再びパソコンの画面と向き合った。


これ明日……いや、もう今日が締め切りだから、終わらせなきゃ帰れない。


あー、目が疲れた。肩甲骨も疲れた。頭も痛い。


あー、くそっ。なんでせめて手書きじゃダメなんだよ。


「お疲れ」

「ぎゃあっ!」


後ろからいきなり発せられた自分のものではない低い声と、頬に当たった熱にあたしはびっくりして声を上げていた。


慌てて振り向くと、さっきまでLINEでやり取りをしていた男。


「な、なんでここに……」


信じらんない。この一言に尽きる。


「たまたま」


中出はコーヒー缶を放ってあたしによこした。


「あちっ」


受け取ったコーヒー缶が熱くて、手を離してしまった缶が足の間に収まった。


「熱い飲み物投げんなよ!」

「飯田さんなら大丈夫かなって」


くくっと笑って、中出は紙パックのカフェオレをストローで啜った。


もう11月も半ばだし、寒くなってきたしホットの飲み物は確かにありがたいけどさ。


「あたしなら大丈夫って、あのさ中出…………」

「何?」

「……ごめん、なんでもない」


あたしは俯いて缶のプルタブを開けた。


「名前で呼んでよ」なんて言いそうになってしまった。


そんなこと言っていいわけない。


本当の彼氏じゃないんだから。いくら形からとはいえ、中出にそんなこと強いたら嫌がるかもしれないし。


いまだに中出との間に隔たりを感じる。飯田さん、って言われると。


まあ、呼んですらもらえなかった頃に比べればだいぶ近づけた感じはするけど。


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