ツンデレくんをくれ!
「あ、アイスも頼んでいいけ?」

「いいわけないでしょ。あたしの経済状況わかってんの?」

「知らん。マンゴーアイス一つお願いしまーす」


ぜってーあたしの話聞いてないだろ、こいつ。


「中出、あのね、あたしは一人暮らししてんだよ」


店員が注文を受けて席から離れてからあたしは口を開いた。


「家賃はなんとかなってるけど、なけなしのバイト代でぎりぎりの生活を送ってんの、わかってるよね。ここは普通、実家暮らしのあんたが奢るパターンだよね」

「知らん。俺もガソリン代は自分で払っとるの。ばかにならんもん、あれ」

「お前、あたしの倍は稼いでるじゃねーか」


あたしは週2でバイトだけど、中出は週4らしい。


あたしなんて週2ですら体力的にきついっていうのに。やっぱり体力のある男はすごいと思う。


「ほんとはガソリン代請求しようと思っとったけど、今日のでチャラにしてやるって」

「や、確実にこっちの方が高いよね。大学からあたしの家まで500メートルしかないからね。今までの合わせたってガソリン代500円もいかないよね、絶対」

「これでもメガ盛りを普通の大盛りにしてやったんやぞ。感謝しろ」

「あたしの一日分の食費があんたの一食で消えたわ」

「寒いやろと思って夜中に飲み物まで奢ってやったんに。俺、めったに奢らんのに」


そりゃまあ、課題に追われて午前様になって迎えに来てくれた中出は毎回コーヒーだの紅茶だの買ってきてくれたけどさ。


顔からして、こいつは普段から他人のために金を使う奴だとはとても思えないし。実際こいつが他人に奢ってあげた姿見たことないし。


確かに10回以上は午前様になるまでパソコンと向き合ってたから、それを入れると中出が損している計算に……。


「……わかったよ。アイスも奢ってやるよ」

「奈子さん、ごちそーさまでーす」


くっそう。満面の笑みの中出にうまく丸めこめられた気分。


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