凪とスウェル
ブチッと切れた携帯は静かで


とても静かで


だけど


耳から電話を離すことも出来ずに


あたしは銅像のように固まっていた




一体どれくらい時間が経ったのか


気がついた時には


なぜか唇がヒリヒリしていて


口の中に血の味がして


下唇をぎゅっと噛んでいたからだとわかった




ハッと我に返り携帯を耳から離す


ふと周りを見渡してみると


今自分がどこにて


何をしているのか


一瞬わからなくなっていた




だけど


これだけは確かなようだ




あたしは


隆治に振られたんだ




知らない間に


涙は止まっていた




こうなることが


なんとなくわかっていたのかもしれない
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