凪とスウェル
いきなりはビックリするだろうから、やや緩やかなジェットコースターから乗ることにした。


初めは余裕な顔を見せていた隆治だったけれど、次第にその顔は険しくなっていった。


そしてついに、この遊園地の目玉、超スリル満点のジェットコースターの列に並んだ。


前の人達が乗る様子を不安そうに見つめる隆治。


あたしは内心おかしくてたまらなかった。


そして、ついにあたし達の番になった。


二人で横並びに乗り込むと、コースターはカタカタと音を立てて、高い地点へと昇り始めた。


「おいおい。これ、どこまで上がるんだよっ」


「まだまだ先は長いよー」


「観覧車よりも高いんじゃねぇの?」


「そうかもねぇ」


まだ走っていないのに、ぎゅっとバーにしがみついている隆治が面白過ぎる。


「おい、すず。見ろよ。景色すげー綺麗」


トクンと。


心臓が音を立てた。


すずって…。


すごく久しぶりに呼ばれた。


再会してから、一度も呼ばれたことなかったのに…。


「ホントだね。遠くまで見えるねー」


この高さから見る景色は最高だなと思っていると。


ついにジェットコースターは最高地点から滑り落ち始めた。
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