凪とスウェル
隆治は泊まってもいいけど、さすがにサエを泊めるわけにはいかなくて。


向こうの親も心配するから、そろそろサエを帰さないとなって話してたんだ。


俺、その日ちょっと風邪気味で。


鼻水が少し出る程度だったんだけど。


でも外は寒いし、サエを送るのが少しおっくうで。


隆治に頼んだんだ。


サエを送ってくれないかって。


隆治は快く引き受けてくれて。


俺、隆治に自分のバイクの鍵を渡したんだ。


深く考えもせずに…。




二人が出発して20分ほど経って、サエからメールが入った。


『無事、家に着いたよ』って。


とりあえずホッとした俺は、温かいものでも飲もうかとキッチンへ向かった。


両親がリビングでテレビを観てたから、俺も紅茶を飲みながら一緒に観ていたら。


俺の携帯に、隆治から電話が入ったんだ。


どうしたのかな?思って電話に出たら。


開口一番言われた言葉に、目の前が真っ暗になった。


携帯を持つ手は冷たくなって、風邪気味の身体が急激に寒気を帯びた。


隆治は力の無い声で、こう言ったんだ…。







バイクで人を跳ねたって…。
< 516 / 733 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop