凪とスウェル
右京君の話を聞きながら、あたしは静かに涙を流していた。


隆治の身に起こったことは、あまりにも大きいことで。


それを一人で抱えて、一人で耐えていたなんて…。


どれだけ辛かっただろう…。


「俺のせいなんだ。

俺が隆治に、サエを送らせたから…。

アイツはバイクの免許を持っていても、雪道なんか走ったことはなかったんだ。

暖かい気候の島から来たんだから。

そんなこともわからず俺は…。

ごめん…、すず…」


「右京君…」


「アイツがお前の存在を隠していたのは、俺に気を遣ってたからなんだ。

もし知ってしまえば、こうやって俺が、バイクを貸したことを後悔するのがわかっていたから。

俺が責任を感じたりしないように…。

そこまで考えてくれてたんだよ…」


隆治…。


「俺がちゃんとサエを送ってたら、そしたらお前と隆治は別れずに済んだはずなのに。

千春ちゃんと付き合ってるのだって。

きっと責任を感じてるからなんだ。

一生残る傷を、千春ちゃんの心と身体につけてしまったから…。

でも、本当に好きなのはお前なんだよ。

こんな古い携帯の写真、今も大事に持って…。

誰にも言わずに、ずっと思い続けてるんだよ。

どうしよう。

どうしたらいいんだよ…っ」
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